求人票では正社員だったのに、採用されたら契約社員だった
求人票では正社員だったのに、採用されたら契約社員だった

『正社員』って良い響きですよね。
ボーナスや充実した福利厚生など、『安定』という面においては最高ですね。
でも、求人で『正社員』って書いてあったのに、いざ採用されてみると、『契約社員』や『パート・アルバイト』扱いだったということがあります。
どうして?これって違反じゃないの?って思いますよね。今日はこの問題についてお話します。

求人票の内容と実際の雇用契約の内容が違っても良いの?

まず、求人票の内容と実際の雇用契約の内容が異なる内容でも良いのか?ということですが、問題ありません。
求人票は「こういう人を、これくらいの給与で雇いたいんだー」「こういう仕事をする人を、こういう条件で雇うよー」って"言ってるだけ"なんです。
実際の"契約"は"雇用契約書"が【全て】です。
求人票に給料50万円って書いてあっても雇用契約書に20万円って書いてあったら20万円だし、求人票に『賞与あり』って書いてあっても雇用契約書に『賞与』の記載がなければいつになってもボーナスの支払い月は来ません。

だから、田舎の方では雇用契約書もなく「君は体は丈夫か? 病気もないね? よし、じゃぁ明日から来なさい」ということを行っている会社もあるようです(私が以前働いていた農業系の会社がそうでした)が、これは従業員にとって非常に不利なんですね。
なぜなら雇用契約がないので、求人票に月給20万円って書いてあっても、実際に20万円支給される保証はどこにもないわけです。
もっと言えば、1か月散々使われた後で「雇用契約なんて結んでない。 労使の関係もないのに、君が勝手にしていただけじゃないか」って言われて1円も払われない可能性すらあるわけです。

「雇用契約書があれば良い」という問題でもない

「雇用契約書をもらっておけばいいんだ!」って思うかも知れませんが、まだ注意点があります。
あとで責められないように、"雇用契約書が曖昧に作られている"ことがあります。

これはどういうことかというと、本来雇用契約書っていうのは、そこに実数値が載っています。
基本給〇万円とか、年間休日数〇日とか
これが普通です。

では、曖昧な雇用契約書、形式だけの雇用契約書はどんなものかと言うと、以下のような物です。
基本給:社内規定に基づいて支給
年間休日数:営業日カレンダーに準じる

これ雇用契約書単体では成立してないですよね。
このような契約書の問題点は2つあります。

1.上記にもある通り、雇用契約書単体では成立していないこと。
労働基準監督署に雇用契約書を持ち込んでも、実際の労働条件を把握することができません。

2.社内規定や営業日カレンダーが書き換えられてしまうことです。
通常雇用契約を変更するには、従業員に雇用契約書を発行し直さないといけませんが、『社内規定に基づく』などと書いてあれば、社内規定が書き換えられてしまったら、同時に労働条件が変わってしまいますよね?
例えば、給与が勤続年数に応じて新卒時18万円スタートだった物が、16万円に変更されたら、給与が変えられてしまうことだって考えられます。

このように不利な条件を押し付けられないよう、雇用契約書の内容は穴が開くほどしっかりと確認しておき、疑問に思う点があればちゃんと確認しましょう。

正社員で応募したのに、契約社員やパート・アルバイトにされた

さて、本題の正社員だったはずが、契約社員やパート・アルバイトにされてしまった事例ですが、上記の通り契約自体は問題ありません。
しかし、雇われる側からすれば、話が違いますよね?
やはり、曖昧な契約書を撒く会社のように、労働者を使い捨てにするような会社なのでしょうか?

実はそうとも言い切れないんです。
会社の資金繰りの一環で、契約社員として雇い入れている場合があるからです。

契約社員やパート・アルバイトにすることで会社の資金繰りになる?

では、正社員志望の人を契約社員やパート・アルバイトで雇い入れることが、どのようにして会社の資金繰りになる仕組みについて説明しましょう。

その会社はキャリアアップ助成金を活用している可能性があります。
このキャリアアップ助成金は、会社が従業員の処遇を改善することにより、国から会社にお金が支払われる仕組みです。
キャリアップ助成金|厚生労働省

このキャリアアップ助成金にはいくつか『コース』があるのですが、上記の契約社員(有期雇用)から正社員(無期雇用)に登用する「正社員コース」の場合、1人あたり57万円もらえます。
1人につき57万円ですよ。5人採用してたら285万円です。それだけあれば、新卒の社員が1人雇えますよね。
※キャリアアップ助成金は会社が受け取る物であり、社員に還元とかそういう物ではありません。

なので、この57万円を獲得するために、まず最初は有期雇用契約しておいて、半年働いてもらった後、本来の正社員に登用するということを行っている場合があります。

本来、社員の処遇を改善したことによって、そういう企業を応援するための助成金だと思うのですが、その助成金をもらうために一旦不利な条件で採用するっていうなんか矛盾してるとは思いますけど、会社も生き残りに必死ですから、これくらいのことは往々にして行われています。
こういう助成金の使い方は、多くの場合、社労士が会社に勧めてくるんですよね。

このような社会の仕組みやお金の仕組みを理解することで、少しだけ世の中が生きやすくなります。
人間社会において、知識は武器です。
会社では提案のバリエーションが増え、自身で独立する時には事業を助けてくれるでしょう。
じゃあな!

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